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第10章の12
みんなを当惑させるような発言に、麻也は恥ずかしいより、
相棒のいやみに何だか腹が立って、
「ま、俺は悪魔に魂売ってるからね。
そのあたりは諒が一番良く知ってるんじゃないの? 」
と言って、勝ち誇ったような笑みを作ってしまった。
すると諒は返す言葉に困ったらしく押し黙ってしまったが、
真樹もやや顔色が変わったように見えて、麻也はちょっと心配になった。
「とにかく、もう少しの辛抱だから、諒。
バンドの地位が落ち着いたら、好きなことも生かせるようになるから。」
「そんな嘘の気持ちで俺はファンに作品を届けたくない。」
麻也は穏やかに言った。
「だから、嘘のないぎりぎりまでポップにしてくれればいいから。」
「何それ。してくれれば、って…」
「いやそれで俺たちはイケるはずだから。」
諒はうんざりしたように首を横に振るばかりだった。
「でも、現状維持かそれ以上のセールスがないと、
たくさんの人に作品もライブも届かないよ。」
それを聞いた途端、諒は隣の麻也の方を向きながら、乱暴に立ち上がった。
麻也も受けて立つように立ち上がると、にらみ合いになり、
胸ぐらをつかみ合いかねない雰囲気になった。
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