404 / 1053

第10章の12

みんなを当惑させるような発言に、麻也は恥ずかしいより、 相棒のいやみに何だか腹が立って、 「ま、俺は悪魔に魂売ってるからね。 そのあたりは諒が一番良く知ってるんじゃないの? 」 と言って、勝ち誇ったような笑みを作ってしまった。 すると諒は返す言葉に困ったらしく押し黙ってしまったが、 真樹もやや顔色が変わったように見えて、麻也はちょっと心配になった。 「とにかく、もう少しの辛抱だから、諒。 バンドの地位が落ち着いたら、好きなことも生かせるようになるから。」 「そんな嘘の気持ちで俺はファンに作品を届けたくない。」 麻也は穏やかに言った。 「だから、嘘のないぎりぎりまでポップにしてくれればいいから。」 「何それ。してくれれば、って…」 「いやそれで俺たちはイケるはずだから。」 諒はうんざりしたように首を横に振るばかりだった。 「でも、現状維持かそれ以上のセールスがないと、 たくさんの人に作品もライブも届かないよ。」 それを聞いた途端、諒は隣の麻也の方を向きながら、乱暴に立ち上がった。 麻也も受けて立つように立ち上がると、にらみ合いになり、 胸ぐらをつかみ合いかねない雰囲気になった。

ともだちにシェアしよう!