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第10章の18

「でも俺はいつもどこかで、諒が俺の『売れたがり』にブレーキをかけてくれることを 感謝してもいるよ。それもなかったら、バンドは暴走してたと思うもん。 ここまで魅力のあるバンドには育たなかったんじゃないかな。」 でも、諒は天を仰ぎみると、再び麻也を見て、 「でも、このタイアップを取ったばっかりに、あの会社からいつまでも 『ドームに行けたのはウチのおかげだ』って言われ続けたらと思うと…」 「そんなの…『仕事は業界の周りもの』なんじゃないの?  それに言われ続けたって、俺一人の身に降りかかる話だと思うよ。 俺、もう、ひどいウワサとか気になんないし…」 …また墓穴を掘ってしまった…と麻也はひやひやしたが、 「麻也さん、もっかい言うけど、あの社長の会社とのつながりなんだよ。 麻也さんの気持ちの中で、そんなにビジネスライクに吹っ切れるものなの? 」 「吹っ切れるさ。」 これ以上、諒に突っ込まれるスキは与えない。 「いろいろあったけど、今の活動もその頃のキャリアがあってのことだし、 それを今の高橋社長や諒たちが評価してくれて今があるし… だから吹っ切れる。 タイアップ取って、天下を取ろうと思う。」 すると諒は渋々こう言い出した。 「…麻也さんがそこまで言うなら…俺もついていくよ、いや、ついて行かせて下さい。 でも…」 「なあに? 」 「でも本当に、体には気をつけてね。俺もいろいろ協力するし。 歌詞で困ったら本とかも貸すし。」 「そうだねえ…俺、国語は4が多かったからねえ… まあまた諒クンチェックもよろしくね。」 「うん。俺でよかったら。あと、メシと睡眠は意地でも取らせるからね。 麻也さんがつぶれちゃ大変だもん…って、実はそれがヤツらの狙いなのか…? 」 「諒がついててくれれば大丈夫だから。気にしないで。」 麻也が優しく微笑むと、諒はほっとしたような表情で抱きついてきた。 ようやくわだかまりが消え、2人はハグしていた…

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