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第10章の23
すると、妙に社長は優しい笑顔で、
「じゃあ、諒もタイアップはOKなんだな? 」
「ハイ。アルバム制作も、麻也さんについていきます♪」
と諒がぶりっ子して言ったところで、社長の形相がみるみる変わり、
「じゃ、遅刻の罰として、2人ともアンプでも持って廊下に立ってろ!
全くもう、とんだ絶倫姫だ! 」
「絶倫はじいやのせい…」
と、麻也は、責任はこっち、と、そっと諒を指差した。
「絶倫じいや?! 」
みんな爆笑したが、諒だけは、じいやって…と今にも泣きだしそうだった…
それを見てますます笑う社長は、
「麻也、王子くらいに言ってやれ。あーおかしい。諒が可哀そうなんで廊下は免除。
さ、会議やるぞ! 」
と、みんなが着席したところで、社長は、
「あ、確認なんだけど、タイアップ、全部ローベルの本社から直で指示が来るから。
また、ロック部門のテコ入れだって担当者は言ってて、
『麻也さんの曲、楽しみにしてます』、だって。」
みんな腕組みをしてしまう。
「かつてクビにした兄貴を頼るのかよ…」
と真樹が言えば、諒も直人も、
「でも、イチオシのバンドじゃないんでしょ? 麻也さんに1曲2曲もらったくらいで…」
「それがヒットすれば違ってくるけど…この写真からは、オーラもないよね…」
「にもかかわらず、タイアップくれるんだから、まあ、いいのかもよ。」
「ま、ようやく兄貴の実力を思い知ったってことかねえ…」
と、真樹がオチをつけたのに、諒が今度は、
「でも、アイドルもローベルの本社なんでしょ?
だったらロックじゃないから、それは別のロックの仕事にチェンジしてもらえないの?」
社長は諒をにらみつけたが、麻也は隣から諒の手を握り、優しく、
「諒、それはもういいの。それに、俺はもう女は卒業したんだから大丈夫。」
「うんうん、麻也たん、わかった~♪ 」
「もうっ、昼間っから、こんな兄ですみません…」
身内だけとはいえ、真樹が冷や汗をかいていると、社長も、
「まあ、事務所公認だから俺にも責任あるしな…」
そんな時に直人が、
「麻也さん、それって卒業できるもんなの? 」
直人っ!とみんながたしなめているはしから諒は、
「…でも、男は卒業してないんだ…って、
そうか、俺だけを見ててくれればいいのか…」
麻也の方は優しく直人に答えた。
「直人、直人もいい人見つかれば卒業できるって…」
「麻也っ! もうその話はやめっ! 」
社長の一喝で、ようやく会議が本当に始まった。
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