415 / 1053

第10章の23

すると、妙に社長は優しい笑顔で、 「じゃあ、諒もタイアップはOKなんだな? 」 「ハイ。アルバム制作も、麻也さんについていきます♪」 と諒がぶりっ子して言ったところで、社長の形相がみるみる変わり、 「じゃ、遅刻の罰として、2人ともアンプでも持って廊下に立ってろ! 全くもう、とんだ絶倫姫だ! 」 「絶倫はじいやのせい…」 と、麻也は、責任はこっち、と、そっと諒を指差した。 「絶倫じいや?! 」 みんな爆笑したが、諒だけは、じいやって…と今にも泣きだしそうだった… それを見てますます笑う社長は、 「麻也、王子くらいに言ってやれ。あーおかしい。諒が可哀そうなんで廊下は免除。 さ、会議やるぞ! 」  と、みんなが着席したところで、社長は、 「あ、確認なんだけど、タイアップ、全部ローベルの本社から直で指示が来るから。 また、ロック部門のテコ入れだって担当者は言ってて、 『麻也さんの曲、楽しみにしてます』、だって。」 みんな腕組みをしてしまう。 「かつてクビにした兄貴を頼るのかよ…」 と真樹が言えば、諒も直人も、 「でも、イチオシのバンドじゃないんでしょ? 麻也さんに1曲2曲もらったくらいで…」 「それがヒットすれば違ってくるけど…この写真からは、オーラもないよね…」 「にもかかわらず、タイアップくれるんだから、まあ、いいのかもよ。」 「ま、ようやく兄貴の実力を思い知ったってことかねえ…」 と、真樹がオチをつけたのに、諒が今度は、 「でも、アイドルもローベルの本社なんでしょ?  だったらロックじゃないから、それは別のロックの仕事にチェンジしてもらえないの?」 社長は諒をにらみつけたが、麻也は隣から諒の手を握り、優しく、 「諒、それはもういいの。それに、俺はもう女は卒業したんだから大丈夫。」 「うんうん、麻也たん、わかった~♪ 」 「もうっ、昼間っから、こんな兄ですみません…」 身内だけとはいえ、真樹が冷や汗をかいていると、社長も、 「まあ、事務所公認だから俺にも責任あるしな…」 そんな時に直人が、 「麻也さん、それって卒業できるもんなの? 」 直人っ!とみんながたしなめているはしから諒は、 「…でも、男は卒業してないんだ…って、 そうか、俺だけを見ててくれればいいのか…」 麻也の方は優しく直人に答えた。 「直人、直人もいい人見つかれば卒業できるって…」 「麻也っ! もうその話はやめっ! 」 社長の一喝で、ようやく会議が本当に始まった。

ともだちにシェアしよう!