416 / 1053

第10章の24

「じゃあなっ、アルバムコンセプトの話から…」 すると、ツアー中に考えていた2人よりも真樹がいち早く、 「ストレートに『苦悩』ってのはどうでしょうか。」 ストレートだなあ…みんな苦笑してしまった。言った本人も苦笑しながら続ける。 「俺たちの苦悩ってのももちろんあるけど、 今のとらえどころのない時代を描くとか、 ファンの苦悩も書けるし、また愛も社会批判も書けるし…」 「そうだね、ちょっと聞くと『カオス』っぽいけど、 『苦悩』だと人の心に寄り添ってる感じがしていいかもね。」 麻也が言うと諒が、 「でも、それだとアルバム全体が暗くなりがちじゃない? 」 「そこはそれ、『批判』っていうエネルギーでぶっ飛ばせ、ってカンジで。」 と麻也が答えれば、直人も、 「最後の方に救いとかを感じさせる曲を持ってくるとかさ。」 「ああ、あとアップテンポの曲でメリハリつければいいのか…」 メンバーを中心に、ある程度の企画がかたまってきたが… 「おいおい、麻也、諒、ツアー中に書き溜めた曲はそれに使えるの? 」 社長に指摘されると2人はペロっと舌を出し、 「ん…まあ、苦悩してましたからねえ…」 「苦悩だけはしてたかも…」 「苦悩『だけ』ってのはなんだっ! 」

ともだちにシェアしよう!