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第10章の28

 彼女たちが帰った後も、まだ少し説明会は続き、 それが終わって9時過ぎには、ロックバンド「デルプレックス」への、1曲だけの提供の件で、 彼らの待つスタジオで麻也は初顔合わせをしていた。  メンバー4人は諒たちと同い年なので、反感めいたものも持たれているかと思いきや、 好きだった日本のバンドが近いこともあってか、フレンドリーな反応で、 打ち合わせの後は、食事にまで誘われてしまった。 まあ、世界を広げようかというくらいの気持ちで居酒屋までついていったのだが、 みんなどんどんアルコールを注文し始める。 「麻也さんは、酒の方は? 」 「大好き…」 でも、あわてて付け加える… 「…日本酒はダメだけど…大トラになっちゃうかも…」 「わー、姫の『大トラ』見てみたい! 」 「っていうか、ライブの麻也さんのワイルドを見るとわかる気がする! 」 とはいうものの、初めての相手だし、仕事は山積みなので、酒の量はセーブしておいた。 が、親交が深まり、お互いのことがわかったということで、曲作りは楽になりそうだった。  しかし… (そういや仕事日に諒と晩メシ食わないのって珍しいかも…) 合間を見てメールをしたが、返事が返ってこない。 無謀にも今日からツアーのために、また気分転換を兼ねてパントマイムのレッスンを再開したので、 ダウンしているのかもしれない…  麻也が家に着いたのは夜中の3時。  リビングから黒のバスローブ姿の諒が、不機嫌そうに飛び出してきた。

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