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第10章の32

「じゃあ諒…今度は俺に、させて…」 すると珍しく諒は、 「ううん、いいよ。麻也さん、早くシャワー浴びておいでよ。」 「えっ…? 」 麻也は思わず諒の顏を見ようとしたが…諒は目をそらしている。 「諒…どうしたの? 」 「ううん、別に…」 そう言って見せる笑顔には…かなりの疲れの色が見えた。 が、やましそうなところはもちろんない。 きっと… 麻也が諒の体調を気づかってパントマイムの再開を反対したので、白状できないのだろう。 「諒、ごめんね。俺ばかりいい思いさせてもらって。 おまけに遅くまで待たせちゃって。 レッスンでも疲れたでしょ。 もう先に寝ててよ。」 と、シャツを羽織ってバスルームに向かおうとすると、裾をとらえられた。 「麻也さん、忘れもの。」 「えっ? 」 降ってくるフレンチキス。 そして… 「おやすみなさいませ♪ 」 「おやすみ♪ 」 「洗ってあげられなくてごめんね。」 「ううん、気にしないで。」 …あんなに疲れていたのに、多分曲を作りながらではあろうけど、 自分が遅くなったのを、わざわざ待っていてくれてたなんて… 「悪かったなあ…でも、愛を感じちゃうね…」  シャワーを浴びながら、幸福感に浸っていた麻也だったが…    バスルームから出て、ミネラルウォーターを取りに冷蔵庫の前に立つと、 冷蔵庫にはノートA4サイズの貼り紙が…そこには、  ・毎朝、お互いのスケジュールをもっときちんと確認すること!    ・予定の変更はきちんと連絡を!             麻也&諒 「…何じゃこれ…」 バスローブ姿の麻也は、真夜中のキッチンで大笑いしてしまった。 諒の、神経質な女の子みたいな細い字では、全く迫力がなかったから…    

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