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第18章の46★あらぬ疑いをかけられる麻也王子

そして社長は決心したように、 「…俺は、その…俺一人の胸にしまって墓場まで持ってってもいい。 諒にも言えないことだっていうなら、もちろん諒にも隠し通す。 だから、教えてくれないか? 」 麻也は言葉を失い続ける。理由があるだけにごまかしきれない。 どうしていいのかわからなかった。 それを見た社長はますます心配になったのだろう。 「麻也、悪いようにはしないから。 本当に疲れてるだけとかいうならいいけど、俺にはそうは見えないんだよ…」 そこまで聞いた途端、麻也の目からは勝手に涙があふれてきて、あわてて下を向いた。 唇を固く結んでいないと号泣になってしまいそうだった。 しかし、社長の問いは意外なものだった。 「…麻也、古巣に戻りたいのか? 」 「えっ…? 」 「…その…さらなるステップアップのために大きな事務所に移りたくなった、とか…そういう誘いが…」 麻也は一瞬だけ絶句したが、すぐに、 「何でそんなこと言うんですか! 俺、そんなこと、思ったこともないのに…」 「麻也ごめん。お前も知っての通りこの業界は情報戦だから…」 「だからって、そんな…」 「本当に申し訳ない。でも、お前のウワサは諒の次にあふれてて、 でも、真面目なお前が弱るなんて、仕事がらみしか俺には考えら…」 「…だからって…ひどすぎる…」 麻也は顔を上げられなかった。

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