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第18章の49★諒に暴れて欲しかった麻也王子

 …すると、ドアをノックする音がした。麻也は取りあえずゆっくり起き上った。 麻也のツアー用の大きなバッグを持って入ってきたのは鈴木だった。 「麻也さん、もうリハーサルの時間なんですが… あと、マンションからざっとですけど、着替え持ってきました。 諒さんには置手紙おいて。スタジオでも話しますけどね。」 と言うと、麻也のお気に入りのコーヒーのペットボトルを差し出され、 麻也はひと口それを飲んだ。 すると鈴木は、麻也が一番心配していたことを教えてくれた。 「...社長の方から諒さんに、麻也さんをしばらくここで預かると話したそうです。 諒さんは、いつもとは違って落ち着いた様子で、ひと言、わかりました、と…」 何となく麻也は寂しい気もしたが、確かに諒も最近は様子がおかしいし… 「社長は何を理由にしたの?」 「あの...陰で引き抜きの話がひどくて、忙しい諒さんも巻き込まれると困るから、って。」 じゃあ、自宅の諒もひとりの時の方が危ないことになるのでは... あまりいい理由に思えなかったが、諒が納得したというのならまあいいか... でも、やっぱり寂しい... そして、これからスタジオで諒に会ったらどんな顔をすればいいのか... そして、こんな下宿生活がいつまで続くのか... ツアー開始までできるとはとても思えない... 何より、諒との息が合わなくなってしまうだろうし、 それは特に古くからのファンにすぐバレてしまうだろう。 それに... (...やっぱり何より、諒のことが...) 「じゃあ、麻也さん、もうそろそろ...」 鈴木に促されて、麻也はのろのろと立ち上がった...

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