435 / 1053

第10章の43

「申し訳ありません。不慣れなもので…」 と、麻也が詫びると、山口は自販機で買った缶コーヒーを差し出してくれて、 タバコに火をつけながら、 「いやあ、こうなるだろうとは思ってたから… とにかく『2世タレントのゴリ押し』のデビューだから… 我々が頑張って、周りが宣伝頑張っても、 数か月後には二束三文で中古屋で売られるようなCDしかできないと思うんだよ…」 「はあ…」 「ただ、冬弥とギターの久保田君が特に麻也君のファンなんだ。 冬弥のわがままで、『会ってみたい』だろ、『曲書いてほしい』だろ、 『プロデュースしてほしい』ときたもんだ。 他のメンバーもディスグラは好きだから、ウハウハさ。」 「これからどうしたらいいんでしょう…? 」 情けないが、思わず口をついて出てしまった。 「麻也君も忙しいだろうから、これまで通り俺がまず土台を作るよ。 麻也君は提供する5曲の立会いだけでいいから。ただね…」 あまりの実力のなさに、山口もレコード会社もデビューを半年延期しようと検討し始めているという。 「だから、あと11か月、来年の7月デビューさ。」 「うーん…」 そうなると、麻也の忙しい時期と丸かぶりになり、殺人的なスケジュールだが… 仕方がない…  そこで二人はお互いのスケジュールを確認し合い、 麻也は2か月後までに詞と曲を完成させることになった。

ともだちにシェアしよう!