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第10章の43
「申し訳ありません。不慣れなもので…」
と、麻也が詫びると、山口は自販機で買った缶コーヒーを差し出してくれて、
タバコに火をつけながら、
「いやあ、こうなるだろうとは思ってたから…
とにかく『2世タレントのゴリ押し』のデビューだから…
我々が頑張って、周りが宣伝頑張っても、
数か月後には二束三文で中古屋で売られるようなCDしかできないと思うんだよ…」
「はあ…」
「ただ、冬弥とギターの久保田君が特に麻也君のファンなんだ。
冬弥のわがままで、『会ってみたい』だろ、『曲書いてほしい』だろ、
『プロデュースしてほしい』ときたもんだ。
他のメンバーもディスグラは好きだから、ウハウハさ。」
「これからどうしたらいいんでしょう…? 」
情けないが、思わず口をついて出てしまった。
「麻也君も忙しいだろうから、これまで通り俺がまず土台を作るよ。
麻也君は提供する5曲の立会いだけでいいから。ただね…」
あまりの実力のなさに、山口もレコード会社もデビューを半年延期しようと検討し始めているという。
「だから、あと11か月、来年の7月デビューさ。」
「うーん…」
そうなると、麻也の忙しい時期と丸かぶりになり、殺人的なスケジュールだが…
仕方がない…
そこで二人はお互いのスケジュールを確認し合い、
麻也は2か月後までに詞と曲を完成させることになった。
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