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第10章の44

「…じゃあこんな感じで。僕もできるだけ密に連絡入れるようにするから。」 「ありがとうございます。」  その後はさらに打ち合わせを進め…終わるとその後は少し雑談だった。 「ディスグラは華があっていいねえ。 まだ粗削りなところもあるけど、本当にいいバンドだよ。 実は麻也君のことは前のバンドから見てたんだ。 最近じゃ本当に快進撃だよね。」 「…はあ、おかげさまで…」 そんなことを話していると、バンドのマネージャーがやってきて、 「あの…そろそろ次の指示をお願いしたいんですが…」 「あ、もうこんな時間か。じゃあ今日のところはあがって、 麻也君の歓迎会にしようか。」  若手の食事会だというのに、冬弥のためなのか、麻也が連れて行かれたのは、 高そうな和食の創作料理の店の個室だった。 (雰囲気いいなあ…諒と来たかったかも…)  しかし、冬弥がいるからアルコールはいい、と麻也が遠慮したのに、 マネージャーは変に気を使って、せめて乾杯だけでも、と冬弥以外にビールを頼み、 乾杯の後は肝心の冬弥はこっそりと、マネージャーのビールに手を伸ばそうとしている。 「冬弥、やめてくれよ。」 うんざりしたようにメンバーたちも注意する。 麻也も何だか腹が立って、きつい口調で、目の前の冬弥に、 「冬弥くん、禁酒できないと、ボーカリストとして持たないよ。」 「えっ? 」 若い麻也が山口の前で厳しいことを言うとは予想していなかったのか、 冬弥はものすごく驚いた様子で、麻也を見つめてきた。

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