437 / 1053
第10章の45
「ウチの諒も、ツアー中とレコーディング中は禁酒。
飲むことよりも、酔って変に大声出してしまったら喉に悪いからね。」
「…はい…」
「何よりどこでファンが見てるかわからないんだから、
ファンをがっかりさせないためにも、
未成年のうちは酒とタバコはやめなきゃ。
ウチのメンバーは健康のためにもひとりもタバコは吸わないよ。」
みんなが感心して聞いていると、山口が、
「40才ですが耳が痛い…」
と笑いを誘い、
「でも、これからのミュージシャンには、意外と節制が求められるよね。」
「そうです。健康第一。」
またみんなが笑って、場の空気がますますなごんだ。
それからは、メンバーは遠慮がちではあったが、少しずつ質問してくるようになり…
冬弥も真面目な表情で、
「諒さんて、デビュー前からあんなに上手かったんですか? 」
「うん。声量あったし、説得力もあったしね…」
と言ってから、諒も陰で努力しているところは知られたくないだろうと思い、
「ただ、ほんとに歌が好きだから、向上心はすごいよね。
そんなオーラみたいなのが観客動員を増やしたと思うんだ。」
そこで麻也はふと気づいて、
「だから冬弥くんみたいにすでにデビューが決まっていることは幸せなことでもあるし、
ハングリーさが欠けることでもあるから…ハングリーさは忘れないでいこうね。」
と言うと、周りはうんうんと聞いているが、冬弥は何だか頬を赤らめている。
ともだちにシェアしよう!