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第10章の45

「ウチの諒も、ツアー中とレコーディング中は禁酒。 飲むことよりも、酔って変に大声出してしまったら喉に悪いからね。」 「…はい…」 「何よりどこでファンが見てるかわからないんだから、 ファンをがっかりさせないためにも、 未成年のうちは酒とタバコはやめなきゃ。 ウチのメンバーは健康のためにもひとりもタバコは吸わないよ。」 みんなが感心して聞いていると、山口が、 「40才ですが耳が痛い…」 と笑いを誘い、 「でも、これからのミュージシャンには、意外と節制が求められるよね。」 「そうです。健康第一。」 またみんなが笑って、場の空気がますますなごんだ。  それからは、メンバーは遠慮がちではあったが、少しずつ質問してくるようになり… 冬弥も真面目な表情で、 「諒さんて、デビュー前からあんなに上手かったんですか? 」 「うん。声量あったし、説得力もあったしね…」 と言ってから、諒も陰で努力しているところは知られたくないだろうと思い、 「ただ、ほんとに歌が好きだから、向上心はすごいよね。 そんなオーラみたいなのが観客動員を増やしたと思うんだ。」 そこで麻也はふと気づいて、 「だから冬弥くんみたいにすでにデビューが決まっていることは幸せなことでもあるし、 ハングリーさが欠けることでもあるから…ハングリーさは忘れないでいこうね。」 と言うと、周りはうんうんと聞いているが、冬弥は何だか頬を赤らめている。

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