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第10章の46

山口は麻也の手元を見ている。 「…あの…何か…? 」 「いや、食べてる姿も上品だなあと思って。 みんなコレだよコレ。 ステージに立つ選ばれし王子はこうでなきゃいけないんだ。」 誰も笑わず、おおっ、と声があがる。 確かに王子ですよねえ、とギターの久保田が念を押す。 やめて下さいよお、と照れ笑いしながら麻也が山口の腕を思わず、 ぽん、と叩いてしまうと、それが可愛いと、誰かが、天使の魔夜さま降臨!と叫ぶ。 すると唐突に冬弥が、 「麻也さんは、その…選ばれし諒さんと本当につきあってるんですか? 」 と、尋ねてくる。 みんな、フリーズする。 が、実はきき耳を立てているのも伝わってくる。 麻也は一瞬、何と答えたものか迷った。 が、山口が、 「冬弥、会ったばかりの人に、プライベートなことまでずけずけと訊くなよ。 デリカシーないぞ。」 「でも俺、作詞の勉強もしてるから…ディスグラみたいな、 その…背徳の世界とかも書きたいし、歌いたいんです。」 「ムリ。」 麻也の口は勝手に動いた。 次の瞬間、しまったと思ったが、みんな麻也と同感らしかった。

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