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第10章の49

「諒さんと電話ですか? 」 冗談めかしたその口調よりも、笑っていない、 そのどこかうつろな大きい瞳が麻也には気になった… (あっ…) それは麻也に過去の記憶を呼び起こさせた。 (…諒…) 諒が告白してくる前の、悶々としていたという頃の、あの瞳。 グラスワインを飲んでクダを巻いていた、あの日の目。 「…それとも、浮気相手のオトコとか? 」 「そんな口叩くのは100年早いよ。」 麻也は速足になったが、冬弥はまとわりつくようについてくる。 「麻也さん、俺、浮気相手で全然かまわないんだけど。」 麻也はもう反応せず、無言のまま個室に入ると、 失礼しました、とだけ言って、席に着いた。 その後から冬弥も入ってきたが、麻也の冷ややかな様子に、 また何かしでかしたのだろうとみんなわかったらしく、 無言のままだった。 その後も何となくムードは良くならず、お開きになった。

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