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第10章の50

 もう一軒くらい行きたいが、冬弥が未成年なので… とマネージャーが詫びてきた時は、 麻也はほっとして倒れ込みそうになったほどだった。 口では、いえいえお構いなく、と言いながら、腰はすっかり浮いていた。 他のメンバーは、麻也の機嫌を損ねたとがっかりしているようだったし、 山口もすっかり疲れ果てた様子で、日を改めてのみに行こうと言うくらいだった。  しかし、肝心の冬弥はなかなかその場を離れようとはせず、 切ない表情で麻也を見つめてきて、マネージャーに叱られてようやく歩き出した…  麻也が家に着くと、諒はダイニングテーブルに向かって、ノートに何か書きつけていた。 どうやら歌詞らしかったが、ノートから目を離すことなく、おざなりな感じで、 「お帰りなさい…」 珍しく、そう言うだけ。あとはずっと、詞を書き続けている。 昨日のような検査はうざったかったが、 何もなければないで寂しい。 (…って、何で俺、こんな体質に…) ちょっとがっかりしながらも、ソファの上から、 「…ねえ、諒…」 「…何でしょうか…? 」 「今日は検査しなくていいわけ? 」 「…あなたは昨日合格しましたから…3か月大丈夫ですよ…」 「あ、そぅ…」 そして、また珍しく無言…

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