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第18章の55★麻也王子の悲しい夜

寝ぼけまなこの社長はあくびをしながら、 「ああそうだ、あっちの部屋に布団敷かせてるから、諒、泊まってけ。 麻也の分も敷いとくからな。」 「えっ…? 」 「諒が夜這いでもして階段転げ落ちたら困るだろ。 慣れない家だし、ツアーもあるんだし…」 夜這いって…また若い二人が驚いているのが伝わってくる…  みんなにお礼を言って、奥の部屋に移動すると… ドアを開けると広い部屋の真ん中には布団が2組、ぴったりとくっつけて敷いてあった… 無言の2人になってしまったので、この状況は麻也には恥ずかしくなって、 下を向いてしまった。 諒はドライヤー借りてくる、と部屋を出て行った… 麻也は、少し眠気がさしてきたのもあって、壁にもたれて膝を抱えて座り、諒を待った。  諒はすぐに戻ってきたが、髪がきちんと乾いたか見る前に、麻也は諒に抱きすくめられていた。  諒の胸に麻也は頬を埋める形になったが、急いで体勢を整えて、ようやく諒の顔が見えたが…傷ついたような無表情… 「ごめんね。でも、来てくれて嬉しい…」 どうにかそう言ったら、またぎゅうっと抱きしめられた。 頬ずりしてくる諒の表情は見えない。そして、諒の切なげな吐息は聞こえるが、諒は何も言ってはくれない… (…諒、今度は俺のどんなことで傷ついてるの…? )

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