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第10章の53

そんな現場で、いくらタイアップのためとはいえ、作業をしているなんて、 心配をかけそうで、何だか言うのがつらかったのだ。 そして…あの冬弥からの告白… あれは自分につけ入られる隙があったからなのか… でも、あんな才能のなさそうな子が、どうして諒にも似たまなざしができたのだろう… それだけは隠さなければと、麻也は口を開いた。 「うーん、やっぱりバーター仕事だけあって、渋いんだよねえ。 素材はイマイチで、ただ、一緒にプロデュースやってくれる山口さんがいい人で、 仕事は学べるかな、みたいなね…」 「イマイチなバンドか…大変だね…」 「性格はいいけど、センスがね。…」 冬弥のことは、完全に伏せた。

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