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第10章の59
「諒、なあに? 」
「いやあ、どうぞ…」
と、諒は何かを促して手を伸ばす。
「えっ? 」
「やー、照れるなあ。麻也さんが、俺のビデオで一人えっちしてくれるなんて…」
「はあ? 」
「もー、はやくはやくぅ、一人えっち♪ 」
「こんなとこでやるわけないじゃん! てか、やらないよっ!」
「え? 何なら寝室にテレビを…」
麻也は思わず立ち上がって諒を見下ろしてしまった。
「そんなんじゃないよっ! 俺は仕事で、諒の長所をチェックしてたの! 」
「何を今さら。」
そう言われれば確かにそうだが…麻也は怒りの持っていき場を失ってしまった。
「じゃあ、麻也さんしか知らないディープな諒クンを今夜も…」
と、笑顔の諒に手を掴まれたところで、
家の中でほとんど存在を忘れられていたFAX兼用の電話が鳴り、
FAXが流れ始めた。
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