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第18章の57★麻也王子のやるせない時間

 いつもとは逆に、麻也は諒の唇を狙う。 「…ま…やさん…あ…」 ようやく諒の舌は麻也の舌に応え始め、声までもらし… でも、もっと…と思った麻也は諒の首すじに、唇も、舌も… そして、諒の黒のシャツのボタンを外そうと…すると、諒にその手を止められた。 「…えっ…? 」 驚いた麻也が見ると、諒は少し寂しそうな笑みでまた麻也を抱きしめ、 「これより先は…ね? ここじゃマズいでしょ…」 確かにそうなんだけど…まあ、諒が満足してくれたようだから良しとしよう。  それからは諒も口を開かず…なので麻也も何も言えず、ややしばらく無言で抱き合っていたが、 ようやく諒が、 「麻也さん、もうそろそろ寝よう。」 と言ったので、ああ、と答えて麻也もそれに従った。  布団に入って、明かりを消して…も、麻也はなかなか寝つけなかった。 それは諒も同じらしい。 でも、二人とも、何を言うでもない。 それでも、偶然が引き起こしたこととはいえ、 こうしてキスができただけマシだったのかも…  …気がつけば、日は昇っていて…諒が起き上っているのが見えた。  これで安心、と、だるくて起きられない麻也は、またいつしか、眠りに、落ちて…

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