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第18章の58★置いてきぼりの麻也王子
…麻也がもう一度目を開けた時、諒はもういなかった。
別の部屋にいて、戻ってきてくれる、という感じもしなかった。
(…諒の登場のパターンを見れば、またいつものように戻れるかな、
って思ったんだけどな…)
…いつもよりは眠れたという感じだが、今日も仕事の時に、
以前のような元気が出ないのは自分でも想像がつく。
(それなのに、諒にがっついちゃったなんて…)
以前なら喜んでもくれただろうが…どこか醒めているようだったな…むしろ軽蔑に近いものがあったかもしれない。
…だからこんな風に置いてきぼりにされたのかも…
(…思えば、薬飲んだ後なのに、よくあんなに動けたよな…)
それだけ自分は必死だったということなのだけど…
(何か諒には伝えられたのかな…)
…でも、その答えがこれなのかも…
その時、ドアがノックされた。迎えに来た鈴木だった…
諒にあきれられるのも嫌で、麻也は真樹の申し出を断り、
レコーディング前の打ち合わせにも、ツアーの衣装の試着にも参加した。
知っている人間ばかりなので安心していたが…
スタイリストの三田が、麻也のブルーのサテンのスーツ姿を見て困ったような顔をするとそばに寄ってきて、こっそりと、
「麻也くん、痩せすぎじゃない? 大丈夫? ウエスト…」
いくら姉御と慕っている人にも心配されるのが嫌で、
そのままでお願いします、とすぐに麻也は話を切り上げてしまった…
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