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第10章の65

 …2人で一緒にのぼりつめたのに…珍しく諒は寡黙で… それで、自然と麻也も無言になってしまって…  …シャワーも浴びて、ベッドに入って、寝る準備が完了したところで、 天井を見つめたまま、麻也は、 「…諒が前に言ってたじゃん。俺たち何もかもつりあいの取れたカップルだって。 だから誰にも引き裂くことはできないって。 その通りだから安心していいと思うんだけど。」 しかし、諒も、天井を見たまま無言だった。 「俺に誤解を招く点があったら改めるから何でも言ってよ。謝りもするし。」 すると諒は言いたいことをこらえている様子だった。 「諒ったら…」 らしくもなく、素肌のままの麻也は同じ姿の諒の首にしがみつき、 それから、諒を胸に抱き取り、その緑の目を見つめた。 が、諒は目をそらし、 「…仕事が…」 でも、何となく嘘っぽい… 「諒…」 でも爆弾を抱えている身には、これ以上は追及できない… すると諒は、麻也の腕をやんわりとほどくと、 「王子様ってね、昔はお姫様以外に貴族の愛人を持つことも多かったんだよ。」 大学は麻也と同じ経済学部だが、本来は文学部志望で歴史も好きな諒が、何を言い出すのか… と、次に気づいた。 またか…でも、ここで怒ったらヤバいんだろうな… 「…つりあい取れなくても、遊びで寝るのは面白いもんね。」 「そうかもね…」 と、逆らわない態度に出たのに、諒の表情は苦しそうにゆがんだ。 「まるで他人事だな…」 麻也はパニックになった。諒は何を言っているのか。あの件の…確証?  それとも…

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