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第10章の66

「麻也さん、ごめん、ごめんね。俺…」 フリーズしていたら…諒の方から折れてきた。 「…いや、麻也さんは悪くないんだよ。ただ、仕事の場所っていうか、世界が違って、一緒にいられないことが初めてで… それで、俺、とまどって麻也さんに当たったっていうか…そんな気持ち…」 それを聞いて、麻也はほっとすると同時に、諒の誠実さ、強さが嬉しかった。 自分なら、プライドからこんなこと、白状できないと思う。アーティストとしてのプライドが邪魔をして… 「…ごめんね。やっぱ俺、麻也さんに比べてまだまだなんだよ。だから不安になった。それは理解して…ね? 」  …いつか直人にこんな言い方をされたことがあったのを麻也は思い出していた。 2人が一緒に暮らし始めたことを宣言した頃に。 あの時は、2人対他者で、何も怖いことはなかった。  その2人が、今、1対1になってしまって、歩むリズムが違ってきた…    いや、そんなことは、世間ではよくあることで、つまりは今まで2人はあまりにもべったりといすぎたのだ。    でも、これからは諒だって活動の幅は広がるだろうし、そうなると、今度は麻也の方が諒を束縛してしまうかもしれない…

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