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第10章の68

 …次の日は、この前の武道館のビデオのパッケージなどの最終確認作業から始まった。  …その合間にまた近所のハンバーグ屋でランチ…  そこでまた麻也は考えてしまった。 (同じ仕事をしていても、これが男と女のカップルだったら少し違ったのかな…) 「兄貴、メシの時くらいリラックスしたら? 」 向かいの真樹に言われ、気がつけば、もうみんなはほとんど食べ終わっている。 「4つも案件抱えてるんだから大変だよね…」 直人にフォローされながら、麻也はあわててデミグラスのハンバーグをひと切れ口にしたが、 ソースが上唇についてしまった。すると隣の諒がすかさず、 「姫、ソースが…」 と、人差し指でそのソースをぬぐい、それを当たり前にぺろっと舐めた。 麻也はちょっと昨夜の<王子と愛人>の話を思い出したが、 諒もそれを思って<姫>と言ったのだろうと、麻也は諒に向かって極上の甘い笑みを浮かべて応えた。 「じいや、ありがと。」 「んもー、麻也さん、か・わ・い・す・ぎ♪ 」 「あ~あ…」 諒に肩を優しく抱かれ、向かいに並んだリズム隊にはいつものようにあきれられ、 隣のテーブルのマネージャーたちには他人のフリをされ… しかし、麻也は心の底からつぶやいていた。 「やっぱり、ホームグラウンドはいいなあ…」 「兄貴にはこれがスタンダードなんだねえ…」 と、真樹にはがっかりされたけれど。 (この章終わり)

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