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第11章<悶える天使>の1
4枚目のアルバム制作にあたって、一人きりになると、麻也は悩むことしきりだった。
外部も含めてみんなは<新進気鋭のヒットメーカー>としての自分に曲を書いてほしがっている。
そこにはやっぱり何がしかの個性が世間に認められ、ヒットしてきたという実績があるからだろう。
でも、回を重ねるにつれてその<個性>は<マンネリ>とか、<自分のコピー>になる可能性だってあるわけで…でも…
(…ツアーの最中もいろいろインプットしてきたんだけどな…)
…とすれば、やっぱり、まずは今の自分が書けるものを書き、ブラッシュアップしていくしかないのだろう。多分。
さすがに曲作り期間のラスト1週間は、他の仕事は入れず、専念させてもらったが…
今回は特に、一日でも早く、アルバムの全体像を把握したかったので、麻也も焦っていた。
そして諒さえも、麻也がディスグラだけを手掛けていればそんなこともなかったのだろうが、
今作では麻也の無理を止めるタイミングが掴めなくなっていた。
相手が作業中だったらと気をつかうので、同じ屋根の下でも、お互いのドアに伝言を貼って「文通」になった。
それも麻也は面倒になり、携帯のメールに頼るようになった。
寝室での甘い時間もなくなっていた。
なまじダブルベッドなもので、互いに遠慮して、疲れても寝室には入らない。
いつしかそれぞれの部屋の床に転がって寝ている。
が、ディスグラだけが対象の諒はまだましだったので、
白のコットンセーターの麻也が、リビングの床の白いカーペットに転がっていたのに出くわした時は、
びっくりしてあわてて抱き起こし…
しっかり抱き締めてしまった…
「麻也さん…」
すると、麻也はけだるそうに目を開け、
「あ…りょお…好き…会いたかった…」
「う、嬉しい…」
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