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第11章の3
麻也の部屋に入りながら、諒は、
(それにしても、第一声は大好き、会いたかった、だったな…♪)
と、嬉しく思い、開きっぱなしの麻也のノートと鉛筆を持ってリビングに戻った…が…
白いソファの上で、それより白い顔色で麻也はぐったりしていた。
それでもノートを渡せばのろのろと何か書きつけ始め、少し機嫌も直ってきたようだ。
それが諒の作戦で、麻也に邪魔にされない程度にそばに寄り、
「麻也さん、最後にメシ食ったのいつ? 」
「…」
…ようやく書き終わったらしい麻也はだるくて仕方がないという風に背もたれに体を投げ出し、
「諒、おぼえてないの? 」
「なんですれ違いのワタシが。」
「じゃあ、わかんな~い…食料の管理は大体諒じゃん…」
諒も、時間が惜しいのとダイエットのためにカロリーメイトの生活だったので、そんなことまで頭がまわらない。
しかし、ここで麻也を部屋に戻せばもう曲のできる前に、麻也は倒れてしまうだろう。
だから、抱き締めた。
弱っている麻也は意外にも素直に諒の胸にもたれかかってきたので、
足元に転がっていた麻也の携帯を手に取ると、諒はホットラインのボタンを押した。
「あ、もしもし、諒です。実はさあ、お宅のお兄さんが大変なことになっててね…」
相手は真樹だ。最初はびっくりしたようだったが、諒のふざけた口調にすぐ笑い出し、
―はいはい、エクレアと、ビーフストロガノフ弁当と、ライチとメロンね…
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