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第11章の4

「ごめんね、真樹、忙しいのに…」 「いやいや、2人に話したいことあったし、ちょうど良かったんだ。」  …弱っていない真樹が、手際よくテーブルの上にデザートまで広げ、食べるばかりの状態にしてくれて、 「はい、いただきまーす…って、兄貴ったらもう… 諒、あーんしてやって…」 好物ばかりを目の前にしても、麻也は固まっていたのだった。 「はい、麻也さん、あーん…」 弟公認のあーんに諒は張り切り、すると麻也にもようやく笑みが浮かんで、それを頬張った。 「…美味い…」 「いつものとこは売り切れだったんだよ。このストロガノフ弁当。2番手のとこのだから。」 「ごめんね、あちこち…」 諒が言いかけると、真樹はそれをさえぎるように、 「いや、クルマだったから大丈夫…」 「えっ? 真樹、クルマ買ったの? 」 諒は車種を訊きたかったが、麻也の過去を思い出して思いとどまり… すると真樹はやや恥ずかしそうに、 「いや、それがね、いやあ、親たちにいいようにされちゃって…」 「何それ、どうしたの? 」 麻也が諒の手前、兄貴ぶった口調で尋ねた。いつしか普通にサラダなんかを食べながら… 「オヤジがクルマ買い替えたいんだって。するとオフクロにも新車ねだられたんだってさ。 それで、今使ってるのを俺たちに使えば、って。」 「やっぱりリッチだなあ、遠藤家は。」 諒はかつて遊びに行った真樹の家の立派さを思い出し、そこでは麻也と過ごしたことがないのを不思議に思い… 「いやあ、違うんだよ。お前ら、クルマは必要だろうが人気商売だからってムダ金使うな、ってこうだよ。」 「ふうん、俺、父さんのクルマの方なら助かるんだけどな。慣れてるし。」 麻也が言うと真樹はにんまりし、 「じゃあ俺、母さんのクラウンもらっていい? 」 「なあに? もう恵理ちゃんのお気に入りなの? 」

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