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第11章の5

すると珍しく真樹は頬を赤らめ、 「うん、そうなんだよ…すっかり喜ばれちゃってさあ… オヤジのベンツの方じゃなくて良かったかな。かえって嫌がられたかもね。 そっちはオトコ2人だし、キャラにも合ってるからいいんじゃない? 」 「そうだねよえ、諒の運転かっこいいだろうなあ、見たいなあ…」 と言いながら、麻也は諒をいつになくうっとりと見つめる。 諒は二重のびっくりでうろたえている。 「ベンツ? え? ベンツ? 俺が? 何で? 」 「いや、俺も使うけど、クルマが降ってわいて良かったじゃない。」 「えっ? 俺も運転していいの? お父さん、いいって言ってるの? 俺、麻也さんの何? 」 箸を転がし、腹を抱えて兄弟は爆笑してしまった。 「いや…兄貴の何かと俺に訊かれても…いやあ、オヤジにとっては、 息子が一緒の飯場に寝泊まりしている同僚の作業員なんじゃない? 」 「じいやの次は飯場? 」 日本の若きデビッド・ボウイが涙目だ。 「いいじゃん、飯場でも、攻めのシルバーのベンツ使えるんだから。」 と、麻也がとりなしたが、 「あ、王子のホワイトじゃないのね…」 「悪いね、ホワイトで王冠ついたのはこっちだから。」 「うーん、でも王子はキミのお兄さんの方だぞ。」 「諒、国産の方が良かったわけ? ベンツだよ。」 諒がおかしなことばかり言うので麻也は、 「諒がベンツ嫌いなら、何か違うの、がんばって買おうか? 」 「兄貴、そこまでする必要ないよ! 何よりどうして同じ両親で兄弟の身分が違うんだよ。」 「じゃあ、天使の方で。」 「今はクルマの話なんだけど。」 「じゃあ、諒は好きなの買って、駐車場も探しなよ。」 「麻也さん、ひどい! 」 「んもー…」 真樹がすっかりふくれてしまったのを見て、麻也はちょっとひっかかった。

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