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第11章の6
「諒…もしかして、うちのオヤジの持ち物だからって、遠慮してる? 」
麻也の、小首をかしげるこのポーズに、諒は弱い。はずが、それにも気づかず、
「え、遠慮? あ、そうそう遠慮かな? ってか、ビンボー人がうろたえてるだけだわ。」
と、ようやく諒は我に返って笑い、
「じゃあ、お言葉に甘えて使わせていただきます。」
と、頭を下げた。
すると、真樹はためらいながら、
「うん…そうして…オヤジもその方が喜ぶから…」
と、ウーロン茶を飲むと、少し声を落として、
「オヤジ、今のベンツ手放したくなかったからさ。兄貴が…」
「運転あんまり上手くないから。そのクルマじゃないと。」
と、真樹を遮るように言う麻也の言葉は何となく嘘っぽく諒には響いた。
それだけに、
(ポルシェのことは…真樹も聞いてるはずなんだけど…)
「…思い出のクルマ…になりますように…」
真樹の笑顔は少しひきつっているように見えた。
少しの沈黙の後、
「…でも、いつクルマ、取りに行こう? 」
「俺、取りに行ってもいいけど、あさってなら。」
兄弟は気楽なものだったが、諒はそういうわけにもいかないだろうと、
「いやあ、やっぱり、お父さんにご挨拶しないと…」
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