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第11章の11

 唇を奪おうとする諒と、それから唇を守ろうとする麻也は、いつしか笑いながらそのゲームに興じていた。  が、やはり疲れがたまっているので、諒もいつもほどは動けない。 それにいつ真樹が帰ってくるともわからないし…でもまあ、それもいいかも… そして久しぶりに見る麻也の無邪気な笑顔は可愛らしくてそそる… 麻也の両手を背もたれに押し付けると、 諒はビーバーのように可愛らしい前歯がちろっとのぞいた麻也の口を、自分の口でふさぎ、 ゆっくりと貪り始めた… 「りょお…も、これ以上は…」 「じゃあ誘わないでよ、今さら、遅いよ…」 そう言いながら動きを止めて麻也の顏を見ると、麻也は珍しく真顔で、 「だって、カンヅメになってからずっと諒のこと、欲しかったんだもん…」 まさに青天の霹靂? 麻也がこんなことを自主的に言ってくれるなんて… 地獄の作業に、神様がくれたごほうびかも…諒はいっきに舞い上がった 「麻也さん、ほんとに? 」 「…って、どこ触るんだよ! もー、うそぴょん! 」 ピロピロピロ…そんな時に家の電話がしつこく鳴りはじめた… 「あー、こんな時にっ! …はいっ、もしもしっ! 」 ―諒、真樹だよん。駐車場まで来てもらえないかな。買い過ぎちゃって。 どうせ兄貴の方はすっぽんぽんだろ? 「失敬な! まだボタンも外してないよっ! 」 ―やっぱり<まだ>なんだ… 「あ、いやあ、むにゅむにゅ…」

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