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第11章の15
音決めとほぼ並行する、アルバムジャケットやミュージックビデオの準備には、
もちろんメンバー全員が関わって、最高と思われるものを形にしていく。
麻也はその作業でもリーダーなわけで…責任は重大だった。
そのかたわらで、何かと諒がいつも以上の提案をしてくれているのが嬉しかったけれど…
その一方で、メンバーのビジュアル面での評価も日に日に高くなっていて、そちらから入ってくるファンも増えているようだった。
例のティーンズ雑誌の「おにいさま図鑑」の麻也のスーツ姿や、その他の音楽系以外の雑誌の写真の反響も大きく、
メンバーはあちこちの音楽雑誌の表紙を飾るようになった。
望んでいた状況ではあるのだけれど、麻也はあまりに忙しくなり過ぎていた。
それで、せっかくのクルマの運転を、社長に禁止されてしまった。
本人以上にがっかりしたのは諒だった。
「ええ~…そんなあ~…」
「じいやのお前がが運転すればいいだろー。ホントはお前だってやつれが見えてるから、運転禁止にしたいんだけどな。」
「いや、運転は嫌じゃないんですけどお、王子が助手席の後ろに腕をまわしながらクルマをバックさせるのがすっげえカッコよくてえ…」
「あー、諒子ちゃんはホレ直しちゃったんだね。」
「そうそう…」
と、直人と楽しく話していると、社長は渋い顔で、
「やっぱり、メンバー全員しばらくは運転禁止にしてくれ。」
「ええ~っ! デートの時困る~! 」
「俺、まだクルマも決まってないのに~?! 」
いつもいい子のリズム隊は大ブーイングだったが、
「仕方ないだろー、そのくらい。逆に、ファンの目気にしながら電車通勤してくれ、っていうんじゃないんだから。
いいと思ってくれよ。疲れてる時に楽できるんだから…」
と、その時、ごちん、という音がした。
麻也がうとうとして、会議テーブルに額が落下していった音だった…
「ほら、言わんこっちゃない…」
「ちょっと麻也さん、大丈夫…? 今冷やしてあげる…」
諒があわてて会議室を飛び出していった…
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