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第18章60★解散前夜?の麻也王子
その肝心の諒は、別の控室に一人で籠って、
歌入れ前の気持ちの集中に専念しているという。
そこまで語り終えると、真樹と直人は黙ってしまった。
直人には昨夜のメールの結果を言いそびれていたし、
真樹にはもらったメールの礼は言ったものの、こちらにも昨夜のてんまつは話していない。
(何か、話すのもおっくうになっちゃってる…ビッグバンドかよ…)
もともとは自分の体調不良が原因なわけだが…
諒とのコミュニケーションのなさと言ったら、
解散直前のバンドとか、離婚直前の夫婦という感じだろうと麻也は思った。
「まあでも、手もケガしなくて良かったじゃない。」
真樹に元気よく言われて、麻也は少し気持ちに明るさが見えたような気がしたが、
そこに鈴木がかけてきた言葉で、また気分が沈んでしまった。
「麻也さん、歌入れには立ち会わないでひと足先に上がりますか? 」
確かに今の自分の状態はそう言われても仕方がないものだろうが、
麻也はそんな自分が許せなくて残ることを選んだ。
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