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第18章の61★眠りの国の麻也王子?

「いや、歌が気になるから、最後までいる…」 「大丈夫かよ、兄貴....」 真樹も直人も鈴木も心配してくれたが、麻也は押し切ってしまった。 とはいうものの、まだ少しふらつくので、 ガラスの壁の向こうのコントロールルームにも移れない。 その時、直人が電話のために出ていった。 麻也はふと気がついて、真樹のそばにあった自分のバッグを取ってもらい... 例の新しい薬を取り出した。 そして小さな白い錠剤を、真樹の陰で隠れるようにして、麻也はこっそりのんだ。 「そっちの効き目はどうなのよ? 」 声をひそめて真樹が訊いてくる。が、麻也も困ってしまい、 「うーん、今初めてのんだからわかんない。」 「えーっ、大丈夫なの? 」 「でも倒れても、知ってる人ばかりだから安心かと思って…」 真樹はがっくりと肩を落とし、苦労をかけるね、と言うと、 「また気分悪くなったら俺に言ってね。」 と、すまなそうにつけ足して、コントロールルームに向かおうとする。 その腕を掴んで麻也は、 「俺も連れてってよ。」 Гダメだよ。薬効くまでねてなよ。まだ顔色悪いよ。」 と、やや手荒に横にされ、薄めの毛布を掛けられてしまった。 それじゃ後でね、と行ってしまった真樹の後ろ姿を見て…  いつしか寝返りを打っていたらしく、 不思議に思いながら体を起こすと、また勝手に時間が進んでいて… 麻也の目に飛び込んできたのは、 コントロールルームを飛び越して、 レコーディングブースの中で腕組みをしている諒と、木内の姿だった。 スタンドマイクはお留守になっている。 テイクの中からの選択でもめている、というより、 諒の調子が良くないように、麻也の目には映った。

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