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第11章の17

「…ん…おはよ…諒…」 「麻也さん、どうしたの…? 」 「何が…? 」 「ベッド抜け出して、ビール3本もあけて…」 麻也はだるそうに横になったまま、 「諒が寝ちゃった後、何か飲みたかったんだけど、ビールしかなくて。 で、ベッドに戻ったら諒を起こしちゃうから…」 「いや、それはいいけどさ、昨日は夕飯にあんなに飲んだのに? 」 「…」 麻也はきまり悪そうに無言でうつむく。 朝から気まずいのも、と思った諒は仕方なく、 「…ま、着替えておいでよ。コーヒー入れとくから…」    こんなことで、ただでさえ疲れている麻也の顏は、珍しくもむくんでしまい、 フォトセッションの前のヘアメークにも手間がかかってしまった。  それで、フォトセッションも時間が押した。  そんな時に限って…いつものカメラマン・石川は、 撮影終了後、英国での修業時代からの友達のボブという大柄な白人男性を連れてきて、 急きょ、スナップを撮らせてほしいと言い出したのだった。  今回のボブの東京出張は、ダメ元でそれも込みだったというのである。 「じゃあ、ディスグラも目当てだったと。」 「でも、そういうのは早く言ってくれないと…」  みんなが戸惑っていると、事務所の高橋社長が、 「世界進出につながるかも~」などと言って、スタジオにやってきた。 これで事務所公認の撮影になったが… 「ボブはファッション関係メインのカメラマンなんだけど、 その広告の時にミュージシャンや俳優も撮ってるんだ…」 と、ビッグネームとの仕事歴をあげる石川の友達ならば親切にしたいところだが、 挨拶が終わるや否や、 ボブは麻也ひとりに鋭い視線を向けてくる。 そして、石川に通訳させるには、 <もっと目元をオリエンタルな感じにしてほしい。> <もっと顏を細く見せてほしい。> <もっと細く見えるジャケットを着せてくれ> <…大人になっちゃったのか…もっと少年ぽい感じかと…> おろおろと通訳する石川には悪かったが、諒は、 「石川さん、この撮影の目的は何? 」 とくってかかっていた。

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