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第11章の19
いつも世話になっているベテランの石川に、失礼だとはわかっていたが、
諒は抗議をやめることができなくなった。
「何か、おかしくないですか? 大人になっちゃった、って何?
俺たちアイドルとかでもないし、
ロックな王子の麻也さんがなんでそんなこと言われなきゃなんないの! 」
メンバーは「世界進出を目指して」学校では、
英語だけは手を抜かなかったので、成績はめちゃくちゃ良かった。
が、日頃話してこなかったので、言われることはかなりわかるが、とっさには言葉が出てこない。
それは諒も同じだったが、怒りは伝えなければと、最後にはボブに向かって日本語で、
「アナタ、俺たちを撮りに来たんでしょ? そのままの俺たちを撮るんじゃないわけ?
何より本当に失礼なんだよ! 言っとくけどね、この人俺の恋人だから。
いやらしい目で見るのやめろってんだよ! 」
するとボブは、石川の通訳の終わりを待たず、カメラバッグから使いこんだような一冊のクリアファイルを取り出した。
その1ページに、ディスグラの雑誌大の切り抜きが入れられていた。
それはディスグラのデビュー当時、初めてその大きさで載ってメンバーが大喜びした、音楽雑誌のグラビアだった。
それを見て、ちょっと、諒は怒りが引くような気がした。
ボブと石川の話を総合すると、石川がかつてのロンドン出張の際、お土産に日本の音楽雑誌を持っていき、
ついでに、日本から自分の移動時に聴いていたディスグラのテープもボブに聴かせたところ、すっかり気に入ってしまったのだという。
「…に、したって、俺たちこの時からそんなに老けてないですよ~」
すると石川が、ボブが日本語がわからないのをいいことに、みんなに聞こえるように、
「あのねえ、俺も昨日初めて聞いたんだけど、彼はほんとにディスグラが気に入って、俺にも言うのが恥ずかしかったくらいらしいのね。
それで、今日になって、最初は見学で、とか言って、結局、撮りたい、と。」
「はあ? 」
社長まで思わぬ展開に目を丸くする。が、諒がいちはやく我に返り、
「でも、なんで恥ずかしいの? やっぱそれって、麻也さんに良からぬキモチを抱いてるってことじゃん。」
すると石川は困り切った表情でみんなに、
「ごめん。彼のロックを聴く耳は確かだし、今後もコネにはなると思う。公私混同する奴じゃないし。今回撮るスナップも、彼が向こうで連載しているコラムに載せる。」
社長はうんうんとうなずくが、諒たちメンバーは、
「答えになってなーい!」
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