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第11章の20
すると石川はますます困った顔になり、言葉を選びながら、
「うん…確かに彼は両刀で、特に、アジア系の美少年とか美少女が好きなんだ。
だけど、メーク変えろとか衣装変えろとか言ったのは、あきらかに、向こうの読者ウケを狙っただけで、仕事上の発言。
少しずつでも、ディスグラを、向こうで紹介して、火をつけたいからなんだよ。」
「ヤバいじゃ~ん、それに何より兄貴ばかりいじってるのは公私混同じゃないんですか? 」
心配そうに真樹が尋ねる。
「んー、まあ、そのへんは芸術家の創作意欲をかき立てる存在、ってことでお許しいただきたい…」
「石川さーん~…」
みんなで困り果てていると、諒よりも背が高くてはるかに恰幅の良いボブは笑顔を作り、
<1人1人のショットも、特別サービスで撮って、雑誌には載せるよ>
などと言う。
「そんなの、下心ミエミエじゃん。」
みんながむくれていると、それをおとなしく聞いていた麻也が口を開いた。
「いいよ、それでも、俺、このチャンスに賭ける。」
「結構です。アナタは、ヤツにとっては育ち過ぎた美少年なんですから! 」
「何より、その雑誌ってどれだけ影響力があるのか疑問だし。」
諒と直人が止めたが、麻也はうつむき加減に、
「それでも、今日より若い日はないし、どこから火がつくかもわからないし、石川さんのお墨付きもあるし…」
力なく、麻也は続けた。
「それに今日は、俺が自分の顏を管理しきれなかった、ってミスもあるから。」
「兄貴…」
「そりゃ確かに俺たちはアイドルじゃないけど、ロックは見てくれも大事じゃん…」
すると諒が、いいことを思いついた、という風に、
「そうだ、せっかくだから記念に俺たちカップルの写真もお願いしようよ。」
と、ボブに話しかけようとするのを、麻也は手を掴んで止めた。
「それは最後にしようよ。創作意欲をそいだら悪いし。」
そう言ってにんまりと笑う麻也の表情は、いつもの堕天使・魔夜姫さまに戻っていた。
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