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第18章の63★忘れ物は麻也王子♪
結局その日は、歌入れはそこで中止。
とりあえず明日、もう一度ボーカルを撮り直すことになった。
...木内が帰るのを見送ってから、
麻也たちメンバーも帰ることにした。
「じゃあ兄貴、気をつけてね。」
と、ドアから出ようとする真樹は、麻也の横の鈴木に見えないように
「後でメールする」とでも言うように目くばせしてきた。
その時、階段から誰か降りてくる音が...
「あれ?諒...どうしたの?」
直人の声で麻也も振り返ると、
黒のコート姿の諒だった。
いつものように背すじを伸ばすでもなく、
ちょっと後ろめたさからやや前かがみになっているようにも見えて、
どうにもいつものカッコよさに欠ける。そして、
「…木内さん帰った? 」
とささやくような声で尋ねてくる。
「帰ったよ。何だよ、どうしたの…」
と真樹や直人が笑いながら言うと、諒はマネージャーたちもかき分け、
「忘れ物…」
と、麻也の腰に手を回すと、さらうように歩き出した。
ちょっと…
麻也本人も驚いたが、背後になっていくみんなの驚きの中、特に鈴木の悲痛な叫びが響く。
諒さん待って下さい、社長に…
しかし麻也は諒に無言のまま急かされて歩かされ、
停まっていたタクシーに押し込められた…
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