489 / 1053
第11章の30
ただ、この日の最後の仕事が諒と別だったのはちょうどよかった。
鈴木から、例のポラロイドカメラの入った、家電量販店の大きな袋を渡されたからだ。
あと、やや使いこんだような黒のカメラバッグも渡された。
電話では聞いていたが…
「これ、本当にもらったの? 」
「ええ。石川さんが、どうしても昨日のお詫びにって。中身は買って間もないポラロイドだそうで…」
フォトセッションの試し撮りを、石川はポラロイドからデジカメに切り替えており、これが余ったという。
「麻也さん用にするとか、あと、諒さんが撮影する時、白黒とカラーで1台ずつにすると便利かもって言われました。」
「うん。諒に提案してみるよ。忙しいのにどうもありがとう。」
家の近所のコンビニで買ったワインを自分のバッグに隠して、玄関に着くと、
諒がいつものように出迎えてくれて…
「麻也さん、どうしたの、その荷物…? 」
「諒にプレゼント。はい。」
「えー、こんな大きい袋、何だろう…? 」
リビングのテーブルの上で、諒は慎重に包みを開け…
「えー! すごい! カメラ?! どうしちゃったの、麻也さん、高いでしょうに…」
ともだちにシェアしよう!