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第11章の31

「いやあ、諒の芸術にもっと協力しようと思って… 前から撮影現場で気にしてたみたいだったから。」 「うん。ポラロイド、が嬉しい。これならツアー先でもすぐ見られるもんね。」 「そうそう。俺もそう思って。なかなか現像に出すタイミングって取れないじゃん。」 「そうなんだよね、フィルム1本撮り切らないともったいないし…」 嬉しくてたまらないといった様子の諒に、本来なら「大翔君をいっぱい撮ってあげなよ」と言うべきなのだろうが、 やっぱり嫉妬が邪魔をする… 「俺も真樹みたいに絵が描けたらっていつも思ってたから…本当にカメラ、ありがとね。大切に使うよ。」 そう言うと、諒はカメラを抱いたまま、麻也の頬にキスをしてくれた… が、顏が離れてみると、諒の表情は一変し、いやらしい笑みを浮かべていた… 「ど、どうしたの、諒…? 」 「…現像を頼まなくっていいっていいってことは…むふっ、もしかしてえ、あんな写真やこんな写真でも大丈夫、ってことだよねえ…」 麻也はしばし言葉を失った。 麻也が考えていた諒のカメラというのは、 ロックミュージシャンのもう一つの顏・退廃的な絵画や写真まで好きな「芸術家・日向諒」の、高尚な趣味だった。 だから、モノクロで上品なセミヌードのモデルとか、 ちょっと変わった写真の大道具のアシスタントくらいはするかもしれないと思ってはいたが… これでは「絶倫じいや」の趣味を助長するだけでは… しかし、諒はやっぱり優しい、愛しい恋人だった。 「二人だけの秘密のアルバムを作ろうよ。」 そう言って麻也を抱き寄せてくれたのだ。

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