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第11章の35
…シャワーを浴び、バスローブ姿になった2人はベッドルームで、
まだ恐る恐るカメラのふたを開けたり閉めたりしていた。
「まやさん、まだバスローブ脱がなくていいよお…」
「何だか違うえっちなオシゴトみたい…ってか、諒、もうこんな時間だから…」
「さあ、フィルムOKっと。さ、一枚だけでいいから、今日の記念に撮らせて。」
それまでに待ち時間はあったのに、いざそう言われると、麻也は困ってしまった。
「や、ポージングわかんない、全脱ぎってどうすれば…」
いざとなると、やっぱり男の、恋人用のヌード写真というのはおかしいような気もして…
仕事の時も見せないような途方に暮れた表情を諒に向けてしまった。
「麻也にいたんの困った顏可愛い♪ はい。」
「えっ、今の撮ったの? 」
諒がまだレンズを向けてくるので手で遮ろうとすると…
「わー、ロックスターっぽい!麻也さんステキ! 」
そう言いながら、諒はまたシャッターを切った。
…そして2人でワクワクしながら見つめる2枚の印画紙…麻也の姿が現れてくる…
「…あれえ、白黒のフィルムだったんだねえ…」
「でも、諒が言うようにロックスターっぽいかも…」
1枚目はかなりマヌケな写真かと思ったが、まあ、目は閉じてないし、ちょっと角度もいい感じで…
「うふ、表情がほんと可愛い。バスローブがほんとプライベートらしくていいね。
あと、くしゃくしゃの髪は2人きりの時だけだし…」
諒の目尻は下がりっぱなしだ。
そしてもう一枚は、
「手も顔も入ってる。奇跡だよ。後ろのベッドに全裸の俺がいたら最高なんだけど…」
「何で? 」
思わず笑いながら麻也が尋ねると、諒はまたふくれてしまい、
「だって、麻也さんに守られてる感があるじゃん。」
年下亭主の可愛らしさに、麻也もまた密かにキュンとくる。バレると諒は調子にのるから、笑みはこらえる。
「うん、じゃあ今度は三脚を用意して、セルフタイマーでがんばろうね。」
「わーい、麻也さん、協力ありがとう! 」
それからあわてて2人ともパジャマに着替え、ベッドに入り、
「早くアルバム買わなくちゃ」と嬉しそうに話していた諒の笑顔を見て…
…一度は寝たはずなのに…
麻也はまた目を覚ましてしまった。そして目は冴えていく。
(仕方ない。時間ないからワインを試してみるか…)
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