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第11章の40

「いや、麻也くん、何も起こらないって。女房妬くほど亭主モテもせず、だよ。」 「柴田さ~ん、今さら~!! 」 みんなからのブーイングに柴田が困っていると、直人がどうにか、 「あ、明日のコーディネート、三田さんに相談した方がいいんじゃない? 」 というと、麻也のまとう空気の冷たさにようやく気づいた諒は、喜びを押し殺し始めながら、 「そ、そうだね、じゃあさっそく電話…」 と、言いかけたところに、柴田は我に返ったらしく、 「…と、その前に本題のインタビューいいかなあ?! 」  インタビューの後はスタジオに入っての、レコーディング前の最終リハーサルだったが… 「…だからあ、諒、何でそこで浮かれたような声にするの? 」 ギターの手を止めた麻也から厳しい声が飛ぶ。こんな感じで曲が最後まで進まない。 「いや、浮かれた声ではないと思うけど。」 「ここは悲しい箇所なんだよ。諒の自信に癒されるとこじゃないじゃん。」 …リズム隊にプロデューサー王子からのダメ出しは出ない。 …やーい、お前の兄ちゃん、鬼軍曹~… と、真樹は直人に小声でからかわれてもいる。 が、真樹は、 「鬼軍曹、っていうより、ちょっとヤバいかも。」 と、麻也に声をかけた。 「兄貴、休憩にして、ちょっと空気変えない? 」 麻也は一瞬、不機嫌そうな表情でためらったが、 「そう? じゃあ、そうしようか。」 と、ギターのストラップを持ち上げた。

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