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第11章の48
大人の落ち着きと独特の貫禄があるベルネは、諒のその思いを優しく受け止めてくれて、真剣に話を聞いてくれる。
そのベルネの表情を見ながら、少し落ち着いてきた諒は、ベルネと麻也との違いを何となく探っている。
ベルネももちろん中性的な顔立ちだが、男らしさの方が勝っている。諒よりも彫りも深い。
そして、麻也はその逆で…年齢のせいばかりではなく、どこか諒の保護欲をそそる「可愛らしさ」がある。
「…でも、興味深いな。麻也くんがバンドに加入した途端、ぐっとメジャーな感じが出てきたなんてね。
俺たちはバンドブームの時、ポップな路線も試してみたけど…」
いまいち納得もできなかったし、売れもしなかったし、とベルネは笑い、
「やっぱり資質、ってやつかなあ…でも、まあ、これはオフレコだけど、
やっぱりある程度売れないと、逆にバンドの好きな事もできなくなるからね、バランスが難しいよね。」
諒には考えさせられる言葉だった。ただ、何となく、ベルネに真実を伝えたくて、
「うちはそういうのは、麻也が見てるんですよね。わずかですけど、メンバーの中ではキャリアが長いので…」
「だとすれば、いいバランス感覚なんだね。でも、これからさらに大きくなるバンドだと思うから、麻也くんも大変だろうね。
みんなでこれからはバンドの重みを分担していかないと、ってことになるのかな。」
そして、バンドは、小さければ小さいなりに、大きければ大きいなりに楽しみもあるけれど苦労も多い、と笑ってベルネは締めた。
飲み会の居酒屋に移動する時、諒はベルネの後ろ姿を見ながらも、複雑な気分だった。
●作者より●
2017年もよろしくお願い申し上げますm(__)m
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三が日は午後のぼちぼち更新です。4日以降は通常通りです。すみません。
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