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第11章の49

(…麻也さんのやり方が俺たちには本当に向いてたんだな…) 売れたがりとか言ってごめんなさい…心の中で諒は麻也に真剣に謝った。 彼のおかげでアンダーグラウンドでゴシックやヴィジュアル系など、 女の子にも受ける美しい、ありとあらゆるタイプのバンドが出やすくなり、ライブシーンは盛り上がっているけれど、 観客の動員数もCDの売り上げも、今のディスグラよりははるかに少ないのだ。 (麻也さんのやり方があってこそ、今の俺があって…)  丁寧にライブをやろう… それがいつもの麻也の口ぐせだった。 だからこそ、「若いのによくまあ売れたねえ」と褒められていると思う…ポップな曲調もそう…  諒は今すぐにでも麻也を抱きしめて感謝のキスの嵐を贈りたくなったくらいだった。  着いたのは、柴田とベルネの行きつけだという、落ち着いた雰囲気の割にはリーズナブルな居酒屋の2階だった。 が、麻也のことを思い出してしまうと何だか気になって、ここを早く切り上げて、スタジオに顏を出した方がいいのではと思った。 と、いうより、麻也の体が心配になった。が、 「乾杯~!」 ビールをひと口飲むと、柴田が、 「さあ、ここからは存分にファントークしてくれえ! 」 「えーっ、えーっと…」 あたたかな笑顔のベルネに見守られながら、また、何から話せば状態になってしまう諒だった。

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