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第18章の71★麻也王子と諒の寂しい朝
しかし、以前の諒ならともかく、今の諒ならこの家に戻ってきても、
すれ違いを装われてしまうかもしれない。
二人でダブルベッドに入ることすらできないかも…
(どうすれば諒を昨夜みたいにのせられるだろう…
…って、こんなこと考えている場合じゃないのに…
でもまた人並みに動けるようにならないと…)
ノックの音がした。
しかし、諒にどんな顔をすればいいのか…
「麻也さん、コーヒー入ったよ…」
ドアを開けた諒はいつもの笑顔も元気もないように見えて、
麻也は改めてショックを受けた。
でも、仕方なく、
「すぐ行くよ…」
と、普通を装って答えた…
二人はほぼ無言でコーヒーを飲んだ。
前の夜のような甘やかなものは一切なかった。
諒が、切ったバケットと蜂蜜を出してくれていた。
どちらの携帯にも、着信やメールはない。
麻也はちょっと焦った。鈴木や社長に見放されてしまったかと…
いや、でもレコーディングが続けられている限りは大丈夫だろう。
麻也は本当は嫌だったが、諒にも不自然にも思われそうだったが、
仕事帰りに図々しくも諒にくっついて帰ってくることにした。
諒なしではいられないと思われても結構だ。
それは諒には内緒なので、その場では黙っていた。
諒も珍しく、今夜はどうするのかも訊いてこないし、
社長にどう詫びを入れるかも尋ねてこない。
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