534 / 1053

第11章の76

 麻也の不眠は、毎晩の諒のマッサージやスキンシップで、良くなったように思われた  …そんな、麻也の心身の調子が戻ってきたところに、 その残酷な事実が告げられた。 「…80、万枚? タイアップもあるのに? なんで100万じゃないんですか!! 」  5枚目のシングル「エンジェル」の初出荷枚数が、100万枚ではなく、80万枚だというのである。  初めて聞く麻也の怒声に、社長も苦しそうに、 「…ん…まあ、レコード会社が決めたことだけどもさ… まあ、俺も不服だけどもさ…俺もみんなも、最終的にはミリオン行くとは思ってるし… あとはプロモーションがんばろう。絶対行くって。」  落胆の色が隠せない麻也の姿に、一番困り果てたのは諒だっただろう。  これからアルバムのレコーディングも本格化する中で、 他のメンバー以上に出稼ぎ仕事まで背負ってしまっている麻也。  この細い肩にかかりすぎている重圧を、自分も何とかできないものかと諒はまた思う。  …でも、それは、毎晩のような夜のお相手だけなのだろうか…何だかそれは違う気がする…  …麻也さんも抱え込み過ぎだけど…

ともだちにシェアしよう!