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第11章の80
「あ…いいけど…いいよ、俺は別に。」
帰って真樹の方が諒を気にしている。
が、諒には言葉がない。
どうして…とは激しく思うけれど、なすすべがない。
「じゃあ、今晩よろしくね…」
そう言うと、麻也は立ち上がり、真樹の後について歩いていく。
真樹が気遣わしげに振り向いてくれるので、諒はようやくついて歩けた感じだった。
「あ、でも、麻也さん、明日は2件、出稼ぎの締切じゃん。」
麻也は<デルプレックス>への1曲だけの納品と、
冬弥のバンド<スナイカーズ>への5曲の納品が入っていた。
「…朝、準備に帰るよ…」
そんなの無理だろう…と諒が思っていると、真樹が振り返って、意外なことを言ってきた。
「そしたら諒がウチに泊まりに来る? その方が二人とも都合いいんじゃない? 」
と、3人で、会議室の前で、立ち話になってしまった。
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