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第11章の82

 その日はようやくアルバム全体のリハーサルテープを録り終えたが…  次の日からアルバム録りに入れるのだが、麻也の納品のために、 1日ズレてしまうことになっていた。 「…まあ、少し気分転換ということで…じゃあ二人とも、また明日ね…」 心配そうな真樹たちと別れ、2人きりになると、麻也が無言なので、諒も無言のまま… でも、夜の街の中、麻也に笑顔を向け続けた。 麻也も少し笑顔になったように見えた。 「麻也さん、お先にシャワーどうぞ。」  リビングに入ると、何事もなかったかのようににこやかに、ミネラルウォーターを渡してやりながら、 諒は言ってみた。 渡されるまま飲みながら、麻也は、ちょっと目をそらすと、うん、と言って立ち上がった。  諒が次にシャワーを浴びて出てくると、麻也はまだ自分の部屋で仕事をしているようだった。 (今日はビールどうすんだろう…何より、何時までやるのかな…) ソファでジンジャエールを飲みながら諒が心配していると、 バスローブ姿の麻也がドアを開けて入ってきた。 「麻也さん、もう寝られるの? 」 「うん…」 ビーバーのような前歯が可愛らしく見える角度で、諒はキュンとしてしまったが… (こ、今夜はガマンだ…)

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