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第12章<帝王の稚児>の1

 次の日の麻也の出稼ぎは、思いのほか手間取ってしまった。  1件目の<デルプレックス>の「1曲提供」の方のすり合わせはすぐに済んだのだが、 2件目の冬弥のバンドの方が…  共同プロデューサーの山口から、2曲ほど、「歌詞が大人っぽくて…」とダメ出しをされ、その場で直し… その後はやっぱりバンドのメンバーに会わないわけにはいかず、メンバーにもデモテープを聞かせ… となると、冬弥にも会ってしまい…  デモテープの方はおおむね好評だった。そして、さっき直した歌詞で冬弥が歌うことになり…  …と、ここで、今日のところは麻也は帰るつもりだったのだが、 せっかくだから、少し成長したバンドの音を聴いていけ、と言われ、麻也は断りきれず、演奏を聴いた。 最近になって、このバンドとはいえ、「あの、ディスティニー・アンダーグラウンドの麻也が共同プロデュース!」 と、大々的に宣伝されることも麻也にも伝えられたからだった。 (ディスグラのファンが買ったらどう思うのかな…) でも、曲は、もちろん歌詞も手は抜いていないから…「楽曲も提供、なんてみんな喜びますよ」と須藤には言われたが…  冬弥たちの演奏は、確かに少し成長していたが… 冬弥も技術的には少し向上していたが…ボーカリストとしては、まだまだだ。

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