548 / 1053
第12章の2
山口のアイコンタクトになだめられ、最後まで取りあえず聴いたが…
「技術面が上がったねえ…」
としか言いようがなかった。
少し見どころがある、ギターの久保田には、自分の曲の中でやってほしいことを伝えたが…
…そんな時も、冬弥の熱い視線は感じる…
(…まあ、高校生でも、本気ってのはあるだろうけど…ほんとに本気なの? 嫌だな…)
密かに麻也が困っていると、冬弥は麻也が久保田から離れたところを見計らって、
「あのっ、麻也さん、ボーカルにもアドバイスお願いします! 」
ますます麻也は困ってしまったが、
「うーん、一日一善! 」
きょとんとしている冬弥以外、言った本人の麻也も吹き出してしまった。
山口が笑いながら、
「何だ、恋愛とかすすめるんじゃないのかよ~…」
と言うと、麻也は苦し紛れに、
「いや、未成年だし、まずは人間として成長しないと…」
言えた義理かよ、と思いながら麻也が苦笑してしまうと、
冬弥は急に思いつめたような表情で、
「俺、彼女と別れました。だから麻也さん、俺がメジャーデビューしたら、
一回デートをお願いしま…」
「おーっ! 課長! 」
山口の大声に、冬弥の必死の告白はかき消され、
メンバーにはきつくたしなめられ、麻也には激しく無視された。
ともだちにシェアしよう!