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第12章の8

 麻也が自宅に着いたのは1時半、いつも通りの午前様だったが… 「…ええ、もちろん、俺は…」  玄関を入ると、リビングから、諒の怒ったような声が聞こえてきた。電話らしい。  でも、諒が帰っていたことが嬉しい麻也がリビングに入ると… 諒は麻也の姿を見て驚き、いったんフリーズして、どうにか電話を続けるといった様子だった。 「…俺から直接社長に言った方がいいでしょうか? 」 …相手はどうも須藤っぽい。いったい何が… 「わかりました。じゃあ明日10時ということで。」 と、諒は電話を切ると、困ったような表情のまま、 「お帰りなさい。意外と早かったんだね。」 と、どうにか笑顔を作るのに、何だか麻也は嫌なものをますます感じ、 「悪い? 」 「いや。何で? 」 諒はソファにもたれかかり、麻也に微笑んでくる。 が、麻也はこのもたもたした空気がどんどん嫌になっていき、 らしくもない乱暴な口調になっていた。 「何の相談? 須藤さんでしょ? 」

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