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第12章の9
「いや。大した話じゃないから気にしないで。」
諒の不自然な表情に、麻也はあの引き裂かれた日を思い出して頭の中がまっ白になった。
「そんなわけないじゃん!! 」
怒りに火がついた麻也は叫び、諒に飛びかかっていた。
「須藤さんに話せて俺に話せないことなんて決まってるじゃん! 」
トラウマがよみがえってきて、声がつまった。
「麻也さん…なに…」
「今度は誰だよ、何か月だよ! 俺が、バンドのために、必死で出稼ぎまでしてんのに、
ゆうべのは、あれは全部大ウソかよ! 」
「麻也さん、そんなんじゃないよ…」
落ち着いて…と諒は麻也をどうにか押さえ、強く強く抱きとめてくれた。
そして、麻也は諒の誠実な声で聞いた。
「ハニートラップなんかじゃないよ。もっと嫌なことに巻き込まれて…
落ち着いて聞いてくれる? 」
もっとって…次に諒が話し始めたのは、とんでもないことだった。
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