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第12章の11
テレビ局で偶然会ったので、「レコーディング中で禁酒中の者同士食事でも」ということになり、
山田行きつけの和食屋に行ったのだが…
須藤は会社に戻ったが、電話をしに行った山田のマネージャーはついてきて…
店の個室に入ろうとしたら、そこには先に山田の事務所のスタッフだという男が2人待っており、
5人でちょっとドリンクを飲んだところで、マネージャーが電話だといって山田を連れ出した。
「何それ…」
「山田さんたちが出ていくなり、その2人が、
『諒さん、バンドやめてソロのロックボーカリストになりませんか』だもん。」
そして、<1人の方があなたは輝ける。ウチのような大きい事務所ならそれが可能です>とか、
<金銭面でもその方が妥当でしょう>とか…
そんなことをたたみかけられ、諒はすぐに席を立って、逃げ出してきたのだという。
諒はがっかりした様子で、
「<デビッド・ボウイもソロでしょう?> だって…」
その後、黙ってしまったが、まだ本当は何か言いたそうだ。
「諒、俺のこと言われたんじゃない? いいよ、俺は気にしないから。
ほら、心の準備はできたから、言って。」
すると、諒は本当に悲しそうに、
「…<ミック・ロンソンみたいに、麻也さんを最初はツアーメンバーにすることもできますよ>だって。」
話を聞いていくうちに、麻也は勘違いからの怒りはすっかり忘れ、諒と怒りを分かち合うような気持ちになっていた。
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